「誰でも作れる」という行為から生まれる建築
HandiHouse projectは2011年から活動を開始した建築家集団である。
設計から施工までを行うが、さらにそのプロセスにプロジェクトオーナー(施主)を巻き込み、現場を開いて、共に作る。その先に供給側がつくりあげる「モノ」になってしまっている建築を、住まい手の「手」に還し、暮らしをより主体的に楽しんでもらいたいと考えている。
私たちが目指すのは「終わらない家づくり」である。
竣工を迎えてから間もなく、電動工具のオススメを聞かれることも少なくない。そんなプロジェクトオーナーたちとの関係を続ける中で、「工作的な行為とスタンスを持った暮らしとは?」という問いを設定することとなった。それに対する実験・検証・発信するための舞台を、横浜市にある巨大な家型の倉庫を見つけ「HandiLabo」と名付けた。
そこでの最初の実験は、その中に作るオフィス空間である。
活動コンセプトを体現するような建ち方とするため、4つのルールを設定した。
1.どこでも、安価に、誰でも買える材料のみを使用する
2.華奢なサイズの軽い木材で人力のみで建てる
3.特殊な加工は一切なし
4.同じ行為の反復で誰でも作りやすく
具体的には、30x40mmの角材4本を間隔を持って束ねて柱とする。梁はツーバイシックス材を2本並行に配し、柱と同材で繋ぎ、ロングスパンの無柱空間を実現させた。各接点の固定はコーススレッドのみ。丸ノコで切り、インパクトで打つといった単純作業の集積で広がる空間は、手間が惜しみなくかかった贅沢さと、増減築が自らの意思と手で安易に行える寛容さがある。また、細い材料を使うことによる人力で組める物質的な軽さは、そのまま空間的な軽さにも置きかわる。それらセルフビルド的要素がこの空間を特徴づけている。
2018年の夏、灼熱の倉庫の中で子どもが工作を楽しむように、HandiLaboのプロセスを楽しんた。
全ての人にとって楽しいは行動原理である。
工作的スタンスを持った建築家として、ここから発信を続けていきたい。
(加藤渓一/HandiHouse project)