素材の味を活かした美味しい料理の様に作る
夫婦と子供4人のための住まい。
敷地は宅地造成によって引き込まれた私道の突き当たり。さらに奥には緑豊かな雑木林が広がる。私道から敷地に留まらず雑木林に向かって子供たちが走り抜け、風や光が通り抜ける。気持ちの良い住処になる素材は揃っていた。それに素直に、そのまま立ち現れたような建物を目指した。
私道から敷地内に引き込むように道を雑木林に向けて通し、それを跨ぐように5枚の幅の広い門型フレームを架ける。建築的な操作としては以上2つである。
フレームの水平方向は150×105材を組んでトラス梁とする。スパン5,500の気積の大きな無柱空間となり、雑木林の風景を室内いっぱいに取り込んだ。そこに道が通ることでアーケードのような公共性を持つ。また、フレームの間には小さなポケットが生まれる。機能や物がおさまり、柔らかく分節されたパーソナルな居場所となる。また、ヒダ状の壁面がカスタマイズやDIYをするきっかけとなる表面積を増やす。
道で友人が集まり近くの畑で取れた泥付きの野菜を処理する。脇にあるオープンキッチンで調理をして、丸いカウンターを囲んで食べる。床との段差に腰掛けておしゃべりをしている脇を子供たちが走り抜ける。ロープを渡して洗濯物を干す。そんな様子をポケットに寄りかかって眺めてる人もいる。そんな暮らしの光景はさながらどこかの国の街路のようにも見えてくる。
施主は隣地に広がる雑木林に惹かれ、この敷地を購入した。良い環境を活かすのに複雑な操作は必要ない。シンプルさはコストにも良い影響を及ぼす。手数やコストはかけずとも空間は贅沢にできる。素材の味を活かした美味しい料理のような住処の出来上がり。